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高森明勅
2023.9.14 07:00皇室

暮しの中の「縦軸」「横軸」、居間の神棚とベランダの日の丸

わが家の居間には神棚がある。
と言っても、特別にあつらえた物ではない。
家を建てる時に注文して、居間を囲む三方の壁に、
書斎から溢れる本を収める本棚を、予め取り付けて貰っていた。
その棚の東に向かう(つまり西側の)一隅を空けて、
神棚に充てたに過ぎない。

中央に伊勢の神宮、向かって右側には地元の神社、
左側に靖国神社など何社か個人的に崇敬する神社のお札を祀る。
その前に三方(さんぽう)を置き、毎朝、お水を取り替えて、
簡単にお参りする。
家族が外に出掛ける時と帰宅した時にも、それぞれお参りする。

わが愛犬達(ダックスフンドの豆太郎と柴犬の大福、
2匹合わせて豆大福)も、家族の者が神棚にお参りをすると、
これから外出すると分かるようだ。
更に就寝前にもお参り。

神棚の隣りには亡父などの遺影が立て掛けてある。
亡なくなっても毎日、顔を会わせ、時に声も掛ける。
去年は郷里の倉敷で、父が亡くなって30年目の祭典を、
外から神職を呼ばず、私自身が奉仕した。

今年の夏も、郷里で母の3年祭。
白衣の上に浄衣(じょうえ)を着込み、笏(しゃく)を手にして、
霊前で奏上する祭詞(さいし)も勿論、私が心を込めて書いた。

この時には、それぞれ既に独立して、普段は仕事で忙しくしている
子供たち(長男、長女、次男)も集まった。
長女は結婚してシンガポールに住んでいる。
だが祭典には、シンガポール青年で優しくイケメンの
旦那も来日して、わざわざ一緒に参列してくれた
(ちなみに長女は7月23日のイベント「愛子さまを皇太子に」が
開催された時も日本に滞在中で、タイミングよく参加できた。
「イベントの第2部、盛り上がっていたけど、もしお父さんが
いなかったらどうなっていたんだろうね」
などと勝手な感想を述べていた)。

又、わが家では1年間に16ある「国民の祝日」のうち、
“いくつか”に日の丸を掲げる。

先ず、「憲法記念日」は祝う気がしない。
なので除外。

それから日にちが一定せず、“月曜日”に指定されている祝日も、
勝手ながら除外する。
「成人の日」、「海の日」、「山の日」、「敬老の日」、
「スポーツの日」(以前は「体育の日」)がそれに当たる。

だから、実際に日の丸を掲げるのは以下の祝日だけ。

1月1日、「元日」
2月11日、「建国記念の日」
2月23日、「天皇誕生日」
春分日、「春分の日」
4月29日、「昭和の日」
5月4日、「みどりの日」(この日はつい忘れがち…)
5月5日、「こどもの日」
秋分日、「秋分の日」
11月3日、「文化の日」
11月23日、「勤労感謝の日」
これらのうち、宮中で祭祀などが行われているのは以下の通り。

○1月1日、四方拝(しほうはい)・歳旦祭(さいたんさい)。
○2月11日、被占領下の昭和23年7月に施行された祝日法により
紀元節(きげんせつ)が廃止されたのに伴って、宮中の「紀元節祭」
も停止された翌年(昭和24年)以降、昭和天皇ご自身の強い
お気持ちによって毎年、この日に宮中三殿にて「臨時御拝(ごはい)」
が続けられた。

私が伺ったところでは、平成になって上皇陛下は
“臨時”御拝ではなく本来の祭典に戻すことを望まれたという
(その背景には、祝日法が改正され、同日が既に「建国記念の日」
という祝日として復活していた事実があったのではないか)。

しかし、当時の掌典職(しょうてんしょく、皇室祭祀のお手伝いに当たる)
関係者がそれに慎重な姿勢を変えなかった為(!)に、
呼び方のみを「“三殿”御拝」に改められたという、
申し訳ない経緯がある。

令和の今もその形が受け継がれている。
以上は、一般に余り知られていない事実かも知れない。

○2月23日、天長祭。
○春分日、春季皇霊祭・春季神殿祭。
○秋分日、秋季皇霊祭・秋季神殿祭。
○11月23日、新嘗祭。

拙宅の場合、玄関に日の丸を掲揚する設備がない。
その為、2階のベランダに掲げている。
下から見上げると青空を背景に2階で日の丸がへんぽんと
翻(ひるがえ)る光景も、私は気に入っている。
勿論、雨の日には掲げない。

このように毎日、神棚にお参りし、祝日には日の丸を掲げる。
そのような習慣をささやかながら続けて来た。

これによって、家族同士の結び付きだけでなく、
目に見えない神々や亡き魂との繋がりという「縦軸」と、
公(おおやけ)への回路という「横軸」が、僅かでも
家庭の“中に”入り込んでいる気がする。

今は別に暮らしている子供たちにも、それぞれ幼少期以来の
体験による影響が、少しは残っているのではないか。
親馬鹿ながら、我々両親を大切にしてくれ、きょうだい仲良く、
公的な関心も何とか人並みには持っているようだ。

なお長男の住まいでも、質素ながら御神札を祀っている。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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